本記事では「太陽光撤去費用」をテーマに、撤去が必要となる理由、費用の相場と内訳、業者選びのコツ、処分方法や補助金の有無など、知っておくべき情報をわかりやすく解説します。今後のライフプランや設備更新を見据えた判断材料として、ぜひ参考にしてください。
設備の寿命や劣化
太陽光パネルの寿命は一般的に20〜30年とされていますが、使用環境によっては15年程度で出力低下や故障が起こることもあります。また、パワーコンディショナー(電力変換装置)は10〜15年が目安とされ、パネルよりも早く寿命を迎えます。
機器の経年劣化により発電効率が大きく低下したり、修理費用がかさむ場合、撤去して新たな設備へ更新する判断が求められるのです。
土地・屋根の再利用や売却
近年は空き家や遊休地の売却・再活用の流れから、既設の太陽光設備を撤去して更地に戻すニーズも高まっています。
- 住宅の建て替えや屋根リフォーム
- 土地の売却前の整地
- 地目変更や農地転用など行政手続き
これらのケースでは、設置されているパネルや配線、架台などをすべて撤去する必要があります。特に売却を予定している場合、早めの計画と見積もりが重要です。
2. 太陽光撤去費用の相場と内訳

引用元:photoAC
太陽光発電設備の撤去には、パネルの取り外しだけでなく、さまざまな工程が伴います。そのため、費用には幅があり、設置規模や立地条件によっても変動します。
家庭用と産業用の費用差
撤去費用の目安は以下の通りです。
設備種別 | 撤去費用の相場 | 備考 |
---|---|---|
家庭用(5kW前後) | 約10〜30万円 | 屋根設置型・架台含む |
産業用(50kW以上) | 50万円〜数百万円以上 | 地上設置、広範囲、重機作業を要するケースも |
家庭用の方が当然安価ですが、それでも足場や配線撤去、パワコン撤去などを含めると20万円を超えるケースも珍しくありません。
費用に含まれる主な作業内容
撤去費用に含まれる主な内訳は以下のようになります。
- 太陽光パネルの取り外し
架台からの分離作業。人力または簡易クレーンを用いる。 - 架台・配線・機器の撤去
パネル以外にもパワコンや接続箱、配線、架台の撤去が必要。 - 屋根や地面の原状回復
特に屋根設置の場合は、防水シートの補修や塗装のやり直しを伴うことも。 - 産廃処理費用
撤去した機材は産業廃棄物扱いとなり、適切な処分が求められる。 - 足場・重機の使用料(必要に応じて)
特に2階以上の屋根や傾斜のある場所では足場費用が追加される。
撤去業者によって、これらの費用がパッケージに含まれているか、別途なのかが異なるため、見積書の内訳を必ず確認しましょう。
補足:補修工事が別途発生する場合も
屋根に穴を開けて架台を設置していた場合、撤去後に防水処理や塗装補修が必要になるケースがあります。これらは撤去費用には含まれず、別途工事として数万円〜十数万円が追加される可能性がある点にも注意が必要です。
これらの兆候が見られたら、故障による売電ロスを避けるためにも、速やかに点検を依頼するべきです。
3. 業者選びのポイントと注意点

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太陽光発電設備の撤去は、専門性が求められる作業です。誤った業者選びをすると、費用トラブルや安全リスクが発生する可能性があります。ここでは、信頼できる業者の見極め方と注意点を解説します。
見積もりの取り方と比較項目
複数の業者に見積もりを依頼する「相見積もり」は必須です。
以下のポイントに注目して比較しましょう。
比較項目 | 注目すべきポイント |
---|---|
見積もりの明確さ | 内訳が具体的か、追加費用の説明があるか |
撤去対象の範囲 | パネルだけでなく配線・パワコンも含まれるか |
廃棄・リサイクル対応 | 廃棄物処理の流れが明示されているか |
保険加入・安全管理体制 | 作業員の保険加入、足場設置の安全対策など |
実績とレビュー | 過去の施工事例や口コミ評価 |
一式〇〇万円のような曖昧な見積もりには注意が必要です。撤去後に追加請求されるケースもあるため、事前に「追加費用の有無」を確認しましょう。
安さだけで選ばない理由
撤去費用を抑えたい気持ちは理解できますが、価格の安さだけで業者を選ぶのは危険です。
特に注意すべきなのは以下のような業者です。
- 廃棄処理を不正に行う業者(不法投棄など)
- 無資格で電気工事を行う業者
- 足場や安全対策を怠る業者
このような業者に依頼すると、法令違反や事故の責任が依頼者に及ぶリスクがあります。
撤去業者には「産業廃棄物収集運搬業許可」や「電気工事士」などの資格・許認可が必要です。契約前に確認し、万が一の事故時にも対応できる体制かをチェックしましょう。
補足:設置した業者への依頼も検討
可能であれば、設置時に施工した業者に撤去を依頼するのが安心です。設置状況を熟知しているため、作業効率が高く、料金面でも相談しやすい傾向があります。
ただし、廃業や連絡不能になっているケースもあるため、その場合は地域の専門業者を探すことになります。
4. 撤去後の処分方法とリサイクル

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太陽光設備の撤去後、残されたパネルや架台、配線などをどう処分するかは、法令順守と環境保護の観点で非常に重要です。近年では、リサイクルの仕組みも整備され始めています。
パネル・架台・配線の行方
撤去された太陽光設備は、以下のように分類・処理されます。
部材 | 主な処理方法 | 特記事項 |
---|---|---|
太陽光パネル | 産業廃棄物として処分 or リサイクル | ガラス・アルミ・シリコンを再資源化可能 |
架台(鉄・アルミ) | スクラップ処理/金属リサイクル | 錆や汚れ除去後に再資源化されることが多い |
配線・ケーブル | 焼却処分 or 銅の再利用 | 被覆材によっては処理施設の制約がある |
パワーコンディショナー | 小型家電リサイクルに該当 | 一部部品が有害物質を含むため要注意 |
なお、処分方法を誤ると、不法投棄や環境汚染につながり、業者だけでなく依頼者にも責任が問われる可能性があります。
有害物質や法令対応について
太陽光パネルには微量ながら鉛やセレンなどの有害物質が含まれている場合があり、一般廃棄物としては処分できません。
そのため、
- 「産業廃棄物処理業者」による適正処分
- 処理委託契約書の締結
- 処理証明書(マニフェスト)の発行
また、環境省・経産省の連携により、使用済みパネルのリサイクル体制整備が進められており、各自治体やリサイクル施設の対応状況を確認することも大切です。
補足:リユース・リセールの可能性
状態が良好なパネルであれば、中古市場での再利用(リユース)や寄付といった方法も選択肢に入ります。
ただし、保証がなく、出力が低下している可能性が高いため、売却価格はかなり低めです。廃棄費用を抑える目的として活用する場合は、取引実績のある業者を選ぶことが前提となります。
5. 補助金・支援制度はある?

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太陽光発電設備の導入時には各種の補助金が活用されてきましたが、撤去に対する補助金制度はまだ限定的です。ただし、一部の自治体では支援制度が始まっており、今後の制度拡充も期待されています。
国や自治体の動向と注意点
現時点で、国(経済産業省や環境省)による全国一律の補助制度は存在しませんが、自治体単位での独自支援が行われている例があります。
例:自治体の補助制度
- 長野県飯田市:「太陽光発電設備の撤去支援事業」
⇒一定の条件下で最大20万円まで補助。 - 静岡県富士市:「再生可能エネルギー設備撤去助成金」
⇒太陽光・風力などの設備撤去費の1/2(上限10万円)を補助。
「〇〇市 太陽光 撤去 補助金」
などのキーワードで各自治体の公式サイトを検索して最新情報を確認しましょう。
今後の制度改正への備え
今後、使用済みパネルの大量排出が予想される中で、環境負荷の抑制と適正処理の促進のために、国による制度整備が進む可能性が高いと見られています。
環境省・経済産業省は、リサイクル体制の構築やリユース・リサイクルのルール明確化を進めており、将来的には撤去費用への補助制度が導入される可能性もあります。
企業による買取・引取サービスも検討
補助金の代替として、太陽光関連の企業が提供している「無料引取・買取サービス」も選択肢の一つです。
- 程度の良いパネルを無償引取
- 大量一括撤去に伴うコスト削減
- 処分証明書の発行対応
ただし、すべてのパネルが対象になるわけではなく、出力・製造年・メーカーに条件があるため、事前の確認が必要です。
よくある質問

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- 太陽光パネルの寿命は何年?
一般的に太陽光パネルの寿命は20〜30年程度とされています。ただし、寿命とは発電がゼロになる時期ではなく、出力が初期の80%を下回る目安です。機器によっては40年以上使えることもありますが、定期的な点検とパワーコンディショナーの交換などが必要です。
- 撤去工事は自分で行えますか?
基本的にDIYでの撤去は推奨されません。高所作業や電気設備の取り扱いを伴うため、感電や転落のリスクが高く、法律上も電気工事士の資格が必要な作業が含まれます。必ず資格を持った業者に依頼しましょう。
- 撤去後に処分記録は必要?
はい、必要です。特にFIT制度で導入された設備や、産業用設備の場合は「産業廃棄物管理票(マニフェスト)」など、処理の証明書類の保管が求められるケースがあります。万が一のトラブル防止のためにも、撤去業者に書類の発行を依頼しましょう。
- 太陽光発電を撤去すると固定資産税は変わる?
設備によっては撤去後に固定資産税の減額が適用されるケースもあります。特に屋根と一体化していない地上設置型の場合、太陽光設備が資産として評価されていたことが多いため、撤去を自治体に申告することで評価額が変わる可能性があります。
- 撤去ではなく更新・リプレースも可能?
可能です。近年は「リプレース需要(設備更新)」も増加しています。支架(架台)や配線は流用できることもあるため、新しい高効率パネルへの交換を検討することで、引き続き自家発電や売電を継続できる選択肢もあります。撤去とあわせて比較検討してみましょう。